本記事では、イタリア北部のうち「ヴァッレ・ダオスタ」「フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア」「トレンティーノ・アルト・アディジェ」について、まとめていています。
以前は北部全体でまとめていたため、見づらい部分もあったかと思うので、いくつかの週に分けてまとめることにしました。
この記事で「ヴァッレ・ダオスタ」「フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア」「トレンティーノ・アルト・アディジェ」3州の特徴、DOCG、DOCその他ポイントが分かるようになり、教本を読み返すことで理解、記憶が深まります。
イタリア北部各州のワイン
上記、「ヴァッレ・ダオスタ」「フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア」「トレンティーノ・アルト・アディジェ」の3つの州について、以下説明を進めていきます。
Valle d’Aosta
【特徴】
イタリアで一番小さな州。モンブラン、マッターホルンなどに囲まれている。
フランス語も公用語として話されている。
ドーラ・バルテア川の両岸の段々畑でぶどうが栽培されている。畑には石柱が立ち、独特の棚式栽培が行われている。
認定品種が22種類と多い。小規模生産者が多い。
協同組合でも良質なワインを生産している。
白ワインはフレッシュな酸を持ち、赤ワインは以外にタンニンがしっかりしている。生産量が少ないので州外で手に入れるのは難しい状況である。
ピコテンドロと呼ばれるネッビオーロベースの「ドンナス」「アルナーモンジェヴェ」が有名
【歴史】
古代にはケルト人一族のサラッシが住んでいた。
古代ローマ時代からイタリアとフランスをつなぐ交通路として重要な役割を果たしてきた。ナポレオン支配以外はサヴォイア家の支配下であり、そのままイタリア王国に組み入れられた。
【文化・経済】
山の民族らしく、閉鎖的なところがある。控えめで勤勉である。ほとんどが山岳地帯のため、耕作面積は小さく、基本的に貧しい州である。ヴァカンス地として人気がある。
【気候】
アルプス気候
【土壌】
石灰岩、粘土、砂のMix
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ>
Prie Blanc
→ラ・サル村とモルジュ村だけで栽培される品種。
Moscato Bianco
→アロマティックな白ブドウ
Pinot Grigio
→ピノノワールの突然変異種。果皮はグリ。ボディのしっかりしたワイン。
<黒ブドウ>
Fumin
→ヴァッレダオスタの固有種。赤い果実系のアロマ、タンニンはソフトでしっかりした酸を持つ。
Petit Rouge
→ヴァッレダオスタで最も広く栽培されている固有種。赤い果実系の香り。
【主要DOC】
【Valle d’Aosta】
様々な品種、地理表示可能
【Blanc de Morgex et de La Salle】
モンテビアンコの麓。プリエブランデから造られるワイン。
酸が豊富でスマートかつデリケートな個性的なワイン
【Nus Malvoisie】
ピノ・グリを使用したわいん。陰干しぶどうを使用したワインもある。
【Donnas】
ピコテンドロベースのワイン。Caremaににたニュアンス。
【地元料理】
分類 | 料 理 |
前菜 | Mocetta(カモシカの生ハム) Polenta e Fontina(ポレンタに フォンティーナチーズをかけたもの) |
パスタ・スープ | Zuppa Valpellinese(キャベツ、パン、 フォンティーナチーズのスープ) Gnocchi con Fontina (フォンティーナチーズをかけたニョッキ) |
魚介料理 | |
肉料理 | Civet di Camoscio(野生のカモシカの煮込み) Costoletta alla Valdostana (フォンティーナチーズをかけた仔牛のカツレツ) Carebonade(塩漬け牛肉と玉ねぎの煮込み) |
その他 | Caffe alla Valdostana(グロッラという 木製のカップで飲むグラッパや リキュールの入ったコーヒー) |
食材 | |
チーズ | Fontina(DOPチーズ、牛乳、半加熱圧搾、 フォンデュに使用) |
Furiuli-Venezia-Giulia
DOCG名 | タイプ | ブドウ品種・特徴他 |
---|---|---|
Colli Orientali del Friuli Picolit | 【白(甘)】 | ピコリット、生産量が極めて少ない |
Ramandolo | 【白(甘)】 | ヴァルドゥッツオ・フリウラーノ 粘性の強い芳醇な甘口ワイン |
Rosazzo | 【白】 | フリウラーノ |
【特徴】
イタリア北東部。フリウリとヴェネチア・ジューリアの2地域に分かれる。
白ワインの産地としてよく知られている。1970年代に意欲的な生産者たちがクリーンでフレッシュなワインを作り出したことから始まる。
近年は固有品種赤ワインも注目されており、スキオッペッティーノ、レフォスコ、タッツエレンゲで個性的なワインが造られている。
グラッパ蒸留も盛んでフリウリ人はイタリアで一番お酒が強いとされている。
【歴史】
ローマ時代から重要な地方で、アクイレイアは古代ローマでも最も重要な都市の一つであった。
当時Pulcinumと呼ばれるワインの名声が高かった。グレーラの先祖ではないかと言われている。
1866年にイタリア王国となる。戦後トリエステは国連管理下に置かれ、1954年にイタリアに復帰した。
本来ウーディネが州都となるべきだが、歴史的経緯によりトリエステを州都にしている。
【文化・経済】
イタリア語、フリウリ方言以外にスロヴェニア語、ドイツ語も州の公用語として認められている。フリウリ人は寡黙で、頑固な性格の人が多い。
1970年代から工業が発達し、イタリアでもっとも豊かな地域の一つになった。
【気候】
地中海性気候
【土壌】
石灰岩台地
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ>
Friulano
→フレッシュで優美な白ワインとなる。ビターアーモンドアロマとかすかに苦みを感じる。
Ribolla Gialla
→軽やかで、繊細、フレッシュな白ワインを生む。
Verduzzo Friulano
→タンニンが強い。陰干しの甘口ワインが有名。
Picolit
→甘口ワインに適する。受粉が少なく、生産量が数なく価格が高い。
Malvasia Istriana
→ややアロマティックで、アルコール度数が低めのワインとなる。
Chardonnay
Pinot Bianco
→フラワリーなアロマを持つ。
Pinot Grigio
→フルーティーでボディのしっかりしたワインになる。
Sauvignon
→明確で強いアロマが特徴。
<黒ブドウ>
Redosco dal Peduncolo Rosso
→土着品種。果梗が赤い(Peduncolo Rosos)。果実味豊かで産のしっかりした、やや青いニュアンスのある赤ワインを生む。
Schioppettino
→リボッラ・ネーラとも呼ばれる。色が濃く、胡椒のアロマを持つ赤ワインを生む。
Pignolo
→果実味豊かで、酸とタンニンがしっかりしたワインを生む。
Tazzelenghe
→コッリ・オリエンターリで栽培されている。タンニンが強い。長期熟成に適している。
Cabernet Sauvignon :
Merlot
【主要DOCG】
【Colli Orientali del Friuli Picolit】
陰干しにより作られる甘口ワイン。受粉が困難な品種で生産量が少ない。
【Ramandolo】
ラマンドロ地区の甘口ワイン。
【Rosazzo】
フリウラーノをベースにした白ワイン。2011年にDOCG昇格。
【主要DOC】
【Collio Goriziano Collio】
ポンカと呼ばれれる柔らかい泥灰土と砂岩の交じる石灰質土壌。果実味、ミネラル分を持つ白ワイン。フリウラーノとリボッジアラが使用されている。
【Fuliuli Colli Orientali】
コッリオ・ゴリツィアーノににたテロワールを持つ。
【Carso】
白はヴィトヴスカ、赤はテッラーノ。
【Isonzo】
コッリオと品種はほぼ同じ。石灰質土壌でコッリオより豊かな果実味を持つ。
【地元料理】
分類 | 料 理 |
前菜 | Prosciutto di San Danieled(サン・ダニエーレ産生ハム) Frico(すりおろしたモンタージオチーズの粉にトウモロコシ粉を混ぜて焼いた薄いオムレツのようなもの) |
パスタ・スープ | Jota(豚肉、スモークパンチェッタ、インゲン豆、クラウト、トウモロコシ粉の濃厚スープ) Gnocchi alle Prugne(バター、シナモン、砂糖のソースの干しプラム入りのニョッキ) |
魚介料理 | |
肉料理 | Goulash(パプリカを使ったハンガリー風牛肉のシチュ―) |
その他 | |
食材 | |
チーズ | Montasio(DOPチーズ、牛乳、加熱圧搾、モンタジオ山が名前の由来) |
Trentino-Alto Adige
【特徴】
イタリアの最北のワイン産地である。アルト・アディジェはドイツ語圏とトレンティーノはイタリア語圏である。
アルト・アディジェはイタリアを代表する白ワインの産地である。清らかな酸、香り高く、フレッシュな味わいである。赤ワインはデイリーワインのスキアーヴァ種と濃厚な果実味を持つラグレインが重要である。協同組合で作るワインの品質が高いことも特徴の一つである。
サン・ミケーレ・アッラディジェ農業学校はブドウ栽培、醸造で知られた学校で、優れた研究者や醸造家を輩出している。
トレンティーノで近年成長著しいのは瓶内二次発酵のスパークリングワインのTrentoである。ミネラル感豊富な味わいで、フランチャコルタとは対象的である。
白ワインはミュラー・トゥルガウ、ピノ・グリ、シャルドネのできが特に良い。赤ワインは繊細なマルツェミーノ、濃厚なテロルデゴが注目されている。トレンティーノの協同組合の作るワインは質が高い。
【歴史】
【文化・経済】
ドイツ人以上にドイツ人と言われる。イタリア的には融通が利かないとされてしまう。勤勉で、控えめな人が多い。
【気候】
亜大陸性気候、亜地中海性気候
【土壌】
北部:石灰土壌、火山性土壌
南部:川沿い→沖積土壌、丘陵地区→苦灰岩、石灰岩
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ>
Pinot Bianco
→フラワリーなアロマを持つ
Pinot Grigio
→フルーティーでボディのしっかりしたワインになる。
Chardonnay
Muller Thurgau
→デリケートなアロマを持つフレッシュな白ワインとなる。
Traminer Aromatico
→バラ、ライチ、トロピカルフルーツのアロマを持つ。味わいは優しく、アルコール度数が高い。
Nosiola
→土着品種。軽めのフレッシュな白ワインとなる。陰干しされ、ヴィーノ・サントに使われることが多い。
<黒ブドウ>
Schiava
→デリケートで優美な赤ワインとなる。
Lagrein
→土着品種。色は濃く、プラム系の香り、ややスパイシーで力強いワインとなる。
Teroldego
→着品種。色は濃く、フルーティーで、タンニンは強くないが、酸がしっかりしたワインとなる。
Marzemino
→フラワリーなアロマを持つデリケートな赤ワインとなる。
Pinot Nero
→優美な赤ワインを生む。
【地元料理】
分類 | 料 理 |
前菜 | |
パスタ・スープ | Leverknodelsuppe(仔牛のればーをいらたパンの団子を浮かべたスープ。団子はぺーこん、ハム、玉子が入り、アルトアディジェでは、Knödel,トレンティーノでは、Canederliと呼ばれる。) Canederli() Risotto con le Mele(リンゴ入りリゾット) |
魚介料理 | Forelle Blau(クールブイヨンで煮たアルプスの鱒) |
肉料理 | Maiale alla Trentina(豚肉とリンゴのロースト) |
その他 | Strudel(リンゴ、干しブドウ、松の実をロールにした焼き菓子) |
食材 | |
チーズ | Stelvio(DOPチーズ、牛乳、非加熱圧搾) Trentingrana(DOPチーズ、牛乳、加熱圧搾、トレント産は特別) Spressa delle Guidicarie(DOPチーズ、牛乳、加熱圧搾、低脂肪) |
北部(アルト・アディジェ地方)
【気候】
冷涼な気候であるが、昼は温度がかなり上がる。
【土壌】
石灰土壌、火山性土壌が混ざる。
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ>Chardonnay、Pinot Bianco、Pinot Grigio、Muller Thurgau、Riesling
<黒ブドウ>Schiava、Lagrein、Pinot Nero、Cabernet Saubignon、Merlot
【主要DOC】
【Alto Adige】
イサルコ谷は標高が高く、冷涼であるためミュラー・トゥルガウ、シルヴァーナー、ケルナーなどのドイツ系のアロマティック品種がすばらしい。
テルラーノでは、火山性土譲渡石灰質土壌が混ざり、ミネラル分の強い長期熟成能力を持つ高品質白ワインが造られている。
ボツァーノ周辺は赤ワインの産地として有名。Lagraeinの産地として注目されている。濃厚な果実味が特徴であるが、エレガントなロゼも親しまれている。
テルメーノはゲヴェルツトラミネールが有名である。
南部(トレンティーノ地方)
【気候】
ドロミテ山塊野影響で冷涼だが、昼は温度が高くなる。
【土壌】
沖積土壌、苦灰岩、石灰岩、斑岩
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ>Nosiola、Chardonnay、Pinot Bianco、Pinot Grigio、Muller Thurgau
<黒ブドウ>Teroludego、Marzemino、Pinot Nero、Cabernet Saubignon
【主要DOC】
【Trento】
イタリアを代表するワイン。瓶内二次発酵のスパークリングワイン。
【Trentino】
幅広い品種のDOC。チャンブラ渓谷、斑岩土壌でミュラートゥルガウ、ノジオーラが栽培されている。
フレッシュな酸、ロマティックな特徴はトレンティーノならではである。ラガリーナ渓谷はマルツェミーノが栽培されている。
赤ワインは果実味あり、フレッシュなワインである。西の湖の谷はノジオーラを陰干し、ヴィーノサントが造られている。トスカーナより酸化風味が少なめ、繊細な味わいである。
【Teroldego Rotaliano】
ロタリアーノ平野のワイン。テロルデコが栽培されている。
(以上)
【2019/2020 日本ソムリエ協会教本】(日本ソムリエ協会)
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