ワインの原料、「ブドウ」及びて栽培に関することについてまとめています。
エクセレンス対策として、できるだけ原語も併記しています。
※情報は随時追記していきます。
ブドウの栽培条件
気温
- 平均気温:10~20℃
- 緯度:北緯/南緯 30~50度
- 昼と夜の温度差があるとよい
日照
- 光合成には 日照 と 温度 が必要である。
- ブドウ生育に必要な日照時間 : 1000~1500時間
水分
- 年間降水量:500~900mmが望ましい
- 生育期には充分な水分を要し、開花以降は過度な水分は成熟にいい影響を与えない
- 必要な水分、ミネラル等の栄養分を有していること
土壌
- ヴェレゾン期(着色期)に水分供給が止まるような物理的特性のある土地が良いとされる
- 保水性と排水性の両方あることが好ましい
- 栽培には痩せた砂利、礫質土場が適しているといわれている
ブドウの種類
分類
ブドウ科の中で主に2つに分類される
★Vitis vinifera(ヴィティス・ヴィニフェラ)系:ヨーロッパ系品種。主にワイン用として使用。
★Vitis labrusca(ヴィティス・ラブルスカ)系:アメリカ系品種。大半は食用。
生育・栽培サイクルについて
ブドウの育成・栽培サイクルは以下の通り
各ステージの一部についてフランス語⇔日本語の出題もあります。
過程 | 仏原語 | 説明 |
剪定 | Taille | |
萌芽 | Débourrement | |
展葉 | Feuillaison | |
開花 | Floraison | |
結実 | Nouaison | |
着色期 | Véraison | |
成熟 | Maturité | 40日間 |
収穫 | Vendange | 開花から約100日 |
仕立て方法
仕立て方法 | 仕立て名 | 説明 |
垣根仕立て ギョーサンプル Gyout Simple |
長梢1本、2芽の短梢 | |
垣根仕立て ギョードゥーブル Gyout double |
長梢2本を左右にとる その他:コルドン 主幹から左右に枝を分け、2芽の短梢を 等間隔にとる |
|
棒仕立て | モーゼルなど 急斜面で作業性を考慮した 仕立て方法 |
|
株仕立て Goblet |
南仏、スペインなど 主幹上部に短梢を 不規則にとる。 樹勢の弱い品種に適す。 |
|
柵仕立て Pergora |
日本、イタリアなど 多降雨や日差しの 強い地域で作用される。 作業性がよく生食用に適用されることが 多い。 |
栽培技術
重要・よく出る
接木
フィロキセラに免疫のある北米系品種を台木として使用する
台木に各種ぶどう品種の幹を接続する
接木の種類
リパリア種 :湿った土壌に強い、早熟性。収量少な目。挿し木の際に根が出やすい。
ルペストリス種 :乾燥土壌に強い。晩熟性。収量多め。石灰質土壌に弱い
ベルランディエリ種:乾燥土壌に強い。石灰質土壌強い。挿し木の際に根が出にくい。
3大台木原種の交雑種でよく使われるもの
3309 :リパリア×ルペストリス(中程度の乾燥土壌に適し、穂木との相性はよい。樹勢弱め)
101-14:リパリア×ルペストリス(根は浅め、やや湿った土壌を好む。穂木との相性はよい)
SO4 :リパリア×ベルランディエリ(湿潤な土壌を好む。樹勢は強め)
5BB :リパリア×ベルランディエリ(湿潤な粘土土壌を好む。樹勢は強い。)
クローン選抜(Sélection clonale)
安定的な遺伝子を選抜
目的(収量、品質等)別に選抜
マサル・セレクション (Sélection massale)
一つの区画に同じ遺伝子の株のみでは多様性がなくなるという考えのもと、自分の畑の中で好ましい性質の株を残していく栽培管理方法をSélection massaleという。
キャノピーマネージメント
収量調整を行い、ブドウ品質の安定と向上を目的とする
農法分類
有機農法
- 化学肥料、除草剤などの農薬を使用しない
- 有機肥料は認定済みのものを使用する
- 遺伝子組み換え、放射線処理は禁止
- 病害虫には、ボルドー液、天敵となる昆虫を使用する
- 作付前に2年間、最初の収穫までの3年間以上①~④を実施する。
- 公的機関による認証を受ける。
- 認証取得後も定期的に検査を受ける
- 国際的な認証団体で最大の団体はフランスのEcosert。
Biodynamie
- 人智学者「Rudolf Steiner」が提唱した
- 上記有機農法+天体の動きと関連した栽培
- 農薬は使わず、プレパラシオンを使用
- 認証団体Demeter(デメーター)のロゴをラベル記載
病 害
重要・よく出る
病名 | 原因 ・ 症状/対策 | 主な発生年 |
<カビによる病害> | ||
ベト病 英:Downy mildew 仏:Mildiou |
カビ 湿度の高い地域で起こり、白いカビ状の 胞子が形成され、落花、落葉、落果される 対策:ボルドー液散布 |
フランス 1878~1880年ごろ |
灰色かび病 |
カビ 湿度の高い環境下で果粒を灰褐色の カビが覆ってしまう。色素破壊、不快な においを残す。 対策:風通しを良くする |
|
うどん粉病 英:Podery mildew 仏:Oidium |
果粒が白い粉上の胞子で覆われ、果粒の 表皮成長が妨げられ、皮が破れ腐敗の原因 となる。 対策:硫黄を含んだ農薬を散布 |
フランス 1855~1856年 |
晩腐病 (Ripe rot) Glomerella cingulata |
カビ 収穫期の果実を犯し腐敗させる 対策:ベンレートを散布(休眠期) |
|
<害虫による病害> | ||
フィロキセラ Phylloxera Dactylasphaera vitifoliae |
害虫 植物の根や葉に寄生し、樹液を吸って 栄養を吸収してしまい、枯死に至る。 対策:接木苗 |
フランス 1863~1900年ごろ |
<ウィルスによる障害> | ||
リーフロール Leaf Roll |
葉が外側に巻き込む。糖度低下、着色不良を 引き起こす。 対策:苗木の植え替え |
|
コーキーバーク Corky bark |
樹木の亀裂が起き、節が拡大していく。 対策:苗木の植え替え |
|
花ぶるい Coulure |
通常、20-60%が受精・結実するし、 他は落果する。落下する量が極めて多い現象 を花ぶるいという。 |
|
ミルランダージュ Millerandage |
花粉による受精を経ない単為結果(種子なし 果実)が多く発生すると、肥大せず小粒の まま果実になることをミルランダージュ という。 |
主なブドウ品種
No | 白ブドウ | 概略説明 |
---|---|---|
1 | Chardonnay シャルドネ |
世界各地で栽培され、フランスではブルゴーニュで上質な 白ワインが生産される。 冷涼なエリアでは、柑橘系の香り、温暖なエリアでは、 南国系フルーツの香りとなる。 味わいは、産地特性、樽熟の有無により異なる。 |
2 | Sauvignon Blanc ソーヴィニヨンブラン |
フランス・ロワール地方をはじめ、カリフォルニア、 ニュージーランドなどで栽培され、各産地ごとに特徴の あるワインが生産させる。ソーヴィニヨン系の特徴で ある青っぽい植物的な香りは共通である。 |
3 | Riesling リースリング |
おもにドイツまたはその近隣エリアのアルザス地方で 栽培される。酸が豊富な品種である。香りは柑橘系、 小さい花のような香りとなる。 |
4 | Gewurztraminer ゲヴェルツトラミネール |
イタリア北部が起源とされ、色は濃い目、香りは ふくよかでスパイシー、ライチの香りが特徴的。 酸味は少ない |
5 | Muscadelle ミュスカデ |
主な産地はフランスロワール地方で栽培され、酸が多く すっきしたワインとなる。 発酵時に沈殿する酵母と長期間接触させ、酵母の風味を 残すシュールリー製法がある。 |
6 | Semillon セミヨン |
フランス・ボルドーで多く栽培されている。成熟した 果実の香り、味わいは酸味が少なくボリューム豊かなもの となる。貴腐菌が繁殖しやすく、貴腐ワインの原料となる。 |
7 | Chenin Blanc シュナンブラン |
フランスロワール地方が起源とされる。かりん、蜂蜜などの 甘い香りがする。味わいは香りに反して、酸が豊富。 南アフリカではスティーンと呼ばれる。 |
8 | 甲州 | 日本を代表する品種。色は淡く、香り味わいともソフトな 印象のワインとなる。 |
No | 黒ブドウ | 概略説明 |
---|---|---|
1 | Cabernet Sauvignon カベルネソーヴィニヨン |
フランスでは主にはボルドーで、その他各国でも多く栽培 されている。濃い色と豊富なタンニンが特徴的で、 長期熟成に向いている。 |
2 | Cabernet Franc カベルネフラン |
フランスボルドー、ロワールで主に栽培される。 カベルネソーヴィニヨンを少しソフトにした感じの特徴を持つ。 |
3 | Pinot Noir ピノノワール |
フランスブルゴーニュをはじめ、比較的冷涼なエリアで 栽培されている。色は明るめのルビー、香り豊かな品種である。 |
4 | Merlot メルロ |
主にフランスボルドーのサンテミリオン地区で栽培されている。 濃いめの色をしているが、カベルネソーヴィニヨンほど タンニンは強くなく、味わいはソフトなものになる。 |
5 | Syrah シラー |
フランス北ローヌで主に栽培され、色の濃い、味わいは スパイシーなワインとなる。オーストラリアでは、シラーズ として多くのワインが生産されている。 |
6 | Grenache グルナッシュ |
フランスの南部、南ローヌ、ラングドックルーションエリアで 多く栽培されている。スペイン原産で、スペインでは ガルナッチャと呼ばれている。成熟した果実の風味を持つ ワインとなる。 |
7 | Mourvedre ムールヴェードル |
フランス南部、スペインで栽培される。カベルネソーヴィニヨン 同様、強いタンニンを有し、香りは非常にスパイシーな ワインである。 |
8 | Malbec マルベック |
フランス・南西地方で主に栽培される。色は黒に近く、 タンニン豊富なワインとなる。アルゼンチンの代表的な 品種でもある。 |
9 | Gamay ガメイ |
フランス・ボジョレで主に生産され、日本ではボジョレヌーボ としておなじみの品種。早飲みタイプのワインである。 |
10 | Nebbiolo ネッビオーロ |
イタリア北部ピエモンテ州で栽培され、色はあまり濃くなく、 反してタンニンが豊富なワインである。高級ワインのバローロ やバルバレスコの使用品種である。 |
11 | Sangiovese サンジョヴェーゼ |
イタリアトスカーナ州、その他近隣の週で栽培される、 イタリアを代表するキアンティで使用される品種。 成熟した果実の香りで、タンニンはなめらかでバランスの 取れたワインとなる。 |
12 | Tempranillo テンプラニーニョ |
スペインポルトガルで主に栽培される。成熟した果実の香り、 タンニンはなめらかでバランスの良いワインとなる。 テンプラリーニョには「早熟」という意味がある。 |
シノニム
同じぶどう品種でも、産地により名称が異なる品種があります。過去の出題傾向だけで絞りきれないので、白ブドウ、黒ぶどうとも一通り覚えましょう。
No | 白ブドウ | シノニム |
---|---|---|
1 | Chardonnay | Melon de Bourgogne(ジュラ) Beaunois(シャブリ) |
2 | Sauvignon Blanc | Fumé Blanc(アメリカ) |
3 | Riesling | Weisser Riesling(独) Rheinriesling(独) White Riesling(米) Johanneisberg Riesling(米) |
4 | Gewurztraminer | Traminer |
5 | Muscadet | Melon de Bourgogne |
6 | Savagnin | Nature |
7 | Chenin Blanc | Pineau de la Loire Steen |
8 | Pinot Gris | Tokay d’Alsace(仏) Grauburgunder(独) Rulander(独) Pinot Grigio(伊) |
9 | Chasselas | Gutedel(独) Fendant |
10 | Altesse | Roussette |
11 | Ugni Blanc | Saint Emilion(コニャック) Trebbiano(伊) |
12 | Maccabeu | Macabeo(西) Viura(西) |
13 | Vermentino (仏、伊) |
Rolle(仏) |
14 | Pinot Blanc | Klevner(仏/アルザス) Weiβburgunder(独) Pinot Bianco(伊) |
15 | Muller-Thurgau(独) | Rivaner(ルクセンブルグ、スロヴェニア) |
16 | Arbois(仏) | Menu Pineau(仏/ロワール) |
17 | Furmint(ハンガリー) | Sipon(スロヴェニア) |
18 | Folle Blanche(仏) | Gros Plant(仏/ロワール、コニャック、アルマニャック) |
No | 黒ブドウ | シノニム |
---|---|---|
1 | Cabernet Franc | Breton(ロワール) Bouchet(サンテミリオン) |
2 | Malbec | Cot Auxerrois(仏/カオール) |
3 | Pinot Noir | Gros Noirien(仏/ジュラ) Spatburgunder(独) Pinot Nero Blauburgunder |
4 | Syrah | Sérine(仏/ローヌ) Shiraz(オーストラリア) |
5 | グルナッシュ | ガルナッチャ |
6 | Mourvèdre | Monastrell(西) Mataro(豪、米) |
7 | Carignan | Mazuelo(西/リオハ) |
8 | Nebbiolo | Spanna(伊/ゲンメ) Chiavennasca(伊/ヴァルテッリーナ) Picoutener(伊/ヴァッレ・ダオスタ) Picotendro(伊/ヴァッレ・ダオスタ) |
9 | Sangiovese | Brunello(モンタルチーノ) Prugnolo Gentile(モンテプルチアーノ) Nielluccio(コルス) |
10 | Pinotage | Pinot Noir×Cinsault Trebbiano |
11 | Mission(米) | Pais(チリ) |
12 | Cinsaut(仏) | Hermitage(南ア) |
13 | Pinot Meunier(仏) | Schwarzriesling(独) Müllerrebe(独) |
14 | Tempranillo(西) | Ull de Llebre(西/カタルーニャ) Ojo de Llebre(西/カタルーニャ) Cencibel(西/ラ・マンチャ) Tinto Fino(西/カスティーリャ・レオン) Tinto del Pais(西/カスティーリャ・レオン) Tinta de Toro(西/サモーラ) Tinto de Madrid(西/マドリード) Tinta Roriz(葡) Aragonez(葡) |
15 | Zinfandel(米) | Primitivo(伊) |
交配品種
交配品種についても出題されているので、主な品種を覚える必要があります。
(あまりにマイナーな品種が出たとしても、大半の受験者が間違えるので問題なしと割り切ってもいいかもしれません。)
No | 品種 | 交配品種 |
---|---|---|
1 | Vidal | Ugni Blanc×Seibel4986 |
2 | Muller-Thurgau(独) | Riesling×Gutedel |
3 | Kerner | Trollinger×Riesling |
4 | Bacchus | Sylvaner×Riesling×Muller-Thurgau |
5 | Scheurebe | Sylvaner×Riesling |
6 | Faberrebe | Weißburgunder×Muller-Thurgau |
7 | Regent | Sylvaner×Muller-Thurgau×Chambourcin |
8 | Domina | Portugieser×Spatburgunder |
No | 品種 | 交配品種 |
---|---|---|
1 | Dornfelder | Helfensteiner×Heroldrebe |
2 | Pinotage | Pinot Noir×Cinsault |
(以上)
【2019/2020 日本ソムリエ協会教本】(日本ソムリエ協会)
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