ニュージーランドのエクセレント対策として、本記事では、地図は原語表記、各AOPの詳細説明を追加しました。
ニュージーランドの概要
特徴
2017年にワインとスピリッツを対象とした New Zealand Geographical indication Wine and Sprits Registration Act地理的表示登録法が成立、発効した。
ニュージーランドワイングロワーズは18地域をGIに申請し、10地域が登録済み、7地域が通過、登録待ち、1地域は審査中。よって現在のGIは17。サブリージョン化している大きな生産地域であっても、サブリージョンでGI申請はしていない。
ニュージーランドは1980年代後半のソーヴィニヨンブランの登場により、世界的に注目を集めるようになった。後発の利点をいかし、最新の地検や、栽培、醸造技術をいかすことができ、産地選定、苗木の入手、ワイナリー設備の準備、プロモーションなどを効率的に進めることができた。
赤ワインのピノ・ノワールを主要品種としたことで、大量生産に向かないため、個人の生産者が集まるようになった。若い生産者がブルゴーニュやオレゴンに研修に行き情報収集にいそしんだ。
比較的安くワイン作りを始められる環境が、多様なスタイルを持った個人生産者を集めることができた。日本人醸造家も多数いる。
ソーヴィニヨンブランが約7割を占める。また販売量の80%以上は輸出になる。バルクにより輸出され、販売こくで瓶詰めされるケースも多い。
オーストラリアのジェフリー・グロセットを中心としたクレアヴァレーの生産者が白ワインにスクリューキャップを使用するようになってから、ニュージーランドでも積極的に使用されるようになった。
現在は赤ワインにも使用され、99%のワインがスクリューキャップとなっている。
オーストラリアのジェフリー・グロセットを中心としたクレアヴァレーの生産者が白ワインにスクリューキャップを使用するようになってから、ニュージーランドでも積極的に使用されるようになった。
歴史
- 1819年:神父サムエル・マースデンが100種余りのブドウ苗を植えたのが始まり
- 1833年:ジェーム・バスビーによりヨーロッパ系品種が持ち込まれワイン造りが始まる
文化・経済
地理的条件
地図
気候
- 海洋性気候
- 季節による温度差は少ない。ただし日中の温度は大きく、酸味をしっかり確保できます。
土壌
産地別に説明
主要ブドウ品種
No | 白ブドウ | 黒ブドウ |
---|---|---|
1 | ソーヴィニヨンブラン | ピノ・ノワール |
2 | シャルドネ | メルロー |
3 | ピノグリ | カベルネ・ソーヴィニヨン |
4 | リースリング | シラーズ |
5 | ゲヴェルツトラミネール | カベルネフラン |
食文化
移民国家であることから多様な食文化が存在する。
先住民のマリオ族の「Hangi料理」なども現在風にアレンジして、レストランなどでサービスされる。
各家庭にはBBQの器具がそろっていて、週末によく行われている。
ニュージーランドのワイン法
- 国内の食品法、ワイン法によりラベルの表記管理が行われている。
- 品種名:85%以上当該産地のブドウを使用していること。
- 収穫年:85%以上当該年のブドウを使用していること。
- ブレンドしたときは、使用比率の多い順に表示する。
主要ワイン産地
North Island
Northland(GI)
【特徴】
1819年にベイ・オブ・アイランズのケリケリに、NZ初のワイン用ぶどうが植えられた。ワイタンギは初めてワインが作られて場所。カベルネ・ソーヴィニヨンやシラーが栽培されている。
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : シャルドネ
<黒ブドウ> : カベルネソーヴィニヨン、メルロ
Auckland(GI)
【特徴】
オークランド西部、マタカナ、ワイヘケ・アイランドの3つの地区に分けられる。それぞれ特徴が異なる。3地区ともトピックが多く、以下に地区ごとに説明。
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、ピノグリ
<黒ブドウ> : カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネフラン、ピノノワール
Matakana
【特徴】
オークランド北部に位置する。ワインツーリズムも盛んな地区。
メルロのワイン生産者「プロヴィダンス」が有名。自然発酵、亜硫酸無添加などの醸造方法など多様な話題を読んだ生産者である。 このプロヴィダンスは麻井宇介の著書にも影響を与えた。
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : シャルドネ、ピノ・グリ
<黒ブドウ> : カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ
Kumeu(GI)
【特徴】
クロアチア移民によりワイン産業が始まる。NZを代表するシャルドネの生産者「Kumeu River」が存在する。NZ初のMW、Michael Brajkovichが醸造責任者を務めている。
醸造責任者のマイケル・ヴラコヴィッチは1987年NZ初のマスター・オブ・ワインとなった。
【土壌】
火山性土壌由来の粘土質。砂岩、泥岩もみられる。
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : シャルドネ
<黒ブドウ> : カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ
Waiheke Islnad(GI)
【特徴】
小さなリゾート島。ボルドー系の品種を少量生産で高級ワインを産出している。
NZで最も高額な「Destiny Bay Magna Praemia」。
「Stonyridge Larose」は長期熟成タイプのボルドーブレンドワイン。
Sam Harrop MWは2013年から「Cedalion」という名でシャルドネとシラーを生産している。
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : シャルドネ
<黒ブドウ> : ボルドー系品種、シラー
Gisborne(GI)
【特徴】
NZ最東端。ドイツのヘルムート・ベッカー博士の指導のもと、、1960年代にミュラー・トゥルガウが積極的に栽培された産地。
モンタナ、コーバンズ、ペンフォールズがワイナリーを持つ。現在はシャルドネ主体。パイナップル、イエローピーチ、トロピカルフルーツなどよく熟したソフトな味わいが特徴。
世界最東端のワイン産地。フルボディのシャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、ゲヴェルツトラミネールが造られている。現在はNZのシャルドネの首都と呼ばれる。
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : シャルドネ、ピノ・グリ、ゲヴェルツトラミナー
<黒ブドウ> : メルロが主、ピノノワール
Hawke’s Bay(GI)
【特徴】
マールボロに次ぐ2番目の産地。ボルドー家の赤品種とシラーの産地としてNZのかなで重要な地位を占めている。ナルロロ川沿に「Gimblett Gravels District」「Bridge Pa Triangle」の2つの有力なぶどう畑がある。
「Gimblett Gravels District」
スパイシーでタンニンが豊富、骨格がしっかりしている。「Gimblett Gravels Winegrowers Association」が2001年に設立され、現在20社以上が加盟している。地区内に自社畑を有し、95%以上がHeretaunga Plainsの土壌分布図内に分類されていることが加盟の条件となっている。メンバーは地区名、協会名を表示することができる。
「Bridge Pa Triangle」
ホークス・ベイで最もぶどう畑が集中しているエリア。柔らかなテクスチャーとなめらかな果実感が赤ワインの特徴である。シラーは冷涼気候のもと造られ、売り出している。
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : ソーヴィニヨン・ブラン
<黒ブドウ> : メルロ、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン
Central Hawke’s Bay(GI)
【特徴】
ホークス・ベイの南半分がGIに指定される見通し。冷涼な気候、石灰岩質土壌。
【気候】
冷涼な気候
【土壌】
石灰岩質土壌
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : シャルドネ
<黒ブドウ> : ピノ・ノワール、シラー
Wairarapa(GI)
【特徴】
NZを代表するピノノワールの産地。昼夜の寒暖差が大きく、果皮が厚く、豊富な酸を持つブドウができる。
Martinborough(GI),Gladstone(GI),Mastertonの3つのサブリージョンを持つ。
【気候】
冷涼な気候
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : ソーヴィニヨンブラン、ピノグリ、シャルドネ、リースリング
<黒ブドウ> : ピノノワール
Martinborough(GI)
【特徴】
「マーティンボローテラス」「ドライ・リヴァー」「テ・ムナ・テラス」などの地区から構成される。
先駆者のアタ・ランギ、マーティンボローヴィンヤード、クスダ・ワインズが所在するマーティンボローテラスは強い太陽光線、風のおかげで果皮が厚く、黒ブドウの色調は濃く、アントシアニンが豊富である。
ワインのスタイルはこかっくがあり、しっかりしたものとなり「core=芯がある」と表現される。
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : ソーヴィニヨンブラン、ピノグリ、シャルドネ、リースリング
<黒ブドウ> : ピノノワール
South Island
Marlborough(GI)
【特徴】
NZ最大の産地。ワイウラ川沿いのブドウ畑が並ぶ。ワイラウ下流域をWairau Valley,
国道6号線の南側をSouthern Valley,ウィザーヒルズを超えた太平洋側をAwatere Valleyのエリアに分けられている。
豪州のマーガレットリヴァーの「ケープ・メンテル」がマールボロに進出し、ソーヴィニヨンブランが有名になるきっかけとなった。ワインの香りはトロピカルフルーツ、青草などでNZのSBの特徴となっている。
海外の生産者も多く進出してきている。
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : ソーヴィニヨンブラン、シャルドネ、リースリング、ピノグリ
<黒ブドウ> : ピノノワール
Nelson(GI)
【特徴】
マールボロの西側に位置する。ワイメア・プレインズにワイナリーが35社ある。風光明媚な地域でリゾート地、別荘地として人気がある。ビールのネルソンホップが有名である。
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : ソーヴィニヨンブラン、ピノグリ
<黒ブドウ> : ピノノワール
Canterbury
【特徴】
北部にワイン生産者が集中する。1978年クライストチャーチ北部にワイン生産者「St.Helena」がブドウを初めて植えた。ソーヴィニヨンブランの畑が多いが、リースリングの評価が高い。
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : リースリング、シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、ピノグリ
<黒ブドウ> : ピノノワール
Waipara Valley(GI)
【特徴】
クライストチャーチの北部に位置する。地形的に海風がさえぎられ、クライストチャーチより温暖である。
ワイパラヴァレーのさらに内陸のワイカリ地域は石灰岩質(チョーク質)が広く分布していることが90年代に分かり、「Bell Hill」「Pyramid Valley Vineyard」が設立され、短期間で国際的評価を得るワインが造られている。
Waikari地域に石灰岩質の土壌が見つかり、「Bell Hill」「Pyramid Vallay」が設立され、短期間のうちに国際的な評価を受けるワインを産出している。まだGIではない。
【歴史】
1986年に「Pegasus Bay」「Daniel Shuster」が最初にブドウを植えた。ダニエル・シェスターはピノノワール栽培の基礎づくりに貢献した。
【土壌】
海岸部:石灰岩質土壌、内陸は粘土質。
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : リースリング、シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、ピノグリ
<黒ブドウ> : ピノノワール
Waitaki Valley North Otago(GI)
【特徴】
ワイタキ川南岸の新興産地。石灰岩質が発見され、2001年に開発が始まる。気象条件が厳しく、収穫量が安定しない。
【気候】
温かい夏と長く乾燥した秋となる冷涼な気候。
【土壌】
黄土の下に、石灰岩、硬砂岩、片岩由来の沖積土壌
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : ピノグリ、リースリング、シャルドネ、ゲヴルツトラミナー
<黒ブドウ> : ピノノワール
Central Otago(GI)
【特徴】
南緯45度、世界最南端のワイン産地の一つ。ピノノワールで世界的に有名なのは「Felton Road」、初収穫は1997年。
生産者が出資し、「COPNL(Central Otago Pinot Noir Limited)」を作りプロモーションを行っている。毎年「セントラルオタゴ・ピノノワール・セレブレーション」が開催されている。
http://www.pinotcelebration.co.nz/
「DRCエイベル」クローンが見直され、導入されている。
【気候】
半大陸性気候。昼夜の寒暖さが大きい
【土壌】
石英などを含む固いシスト。土壌には有機物が少なく、有機栽培を実施している。
【主要ブドウ品種】
<白ブドウ> : リースリング、シャルドネ
<黒ブドウ> : ピノ・ノワール
以下にサブリージョンの説明。
Gibbston Valley
南極から冷たい南風が入り込むため、冷涼な気候である。ラズベリーなどの赤い果実系で酸が特徴である。
Bannockburn/Cromwell
バノックバーンは深いレス土、土壌中にリン酸カルシウムの凝固したものが見られる。ワインのスタイルは骨格の柔らかい丸みのある黒果実系である。
Pisa Range,Lowburn
ピサレンジは川石、砂の堆積土壌。ローンバーンは砂主体。ワインは骨格の柔らかいスタイルである。
Bendigo
石英を含むシストの丘にブドウ畑が開発された。オタゴの中で最も暑い地区の一つ。この地区のピノ・ノワールは色が濃く、シスト由来の強烈なスパイシーさとミネラル感を持つ。
Wanaka
シスト土壌由来のスパイシーなピノノワール、ガメイ、リースリングが生産される。
Alexandra
シスト土壌からリースリングが造られる。
(以上)
【2019/2020 日本ソムリエ協会教本】(日本ソムリエ協会)
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